消費税廃止の提言

 

日本国民の消費は、バブル崩壊以降ずっと下がり続けてきた。総務省の家計調査によると、2002年には1世帯あたりの家計消費は320万円をこえていたが、現在は290万円ちょっとしかない。先進国で家計消費が減っている国というのは、日本だけである。その一方で、日本企業はバブル崩壊以降に内部留保金を倍増させ、446兆円にも達している。また近年、日本は億万長者の数が激増し、2017年で100万ドル以上の資産を持っている人は2826000人だった。前年より74万人近く増加しており、増加率は世界一。日本で現在1850兆円の個人金融資産があるが、大半は一部の富裕層が握っている。

 

消費税が創設されるとき、財務省は「少子高齢化のために、社会保障費が増大する。そのため、消費税が不可欠」と宣伝してきた。でも、実際消費税は、社会保障費などにはほとんど使われていない。大企業や高額所得者の減税の穴埋めに使われた。

 

消費税が導入されたのは1989年で、その直後に法人税と所得税が下げられた。さらに消費税が5%に引き上げられたのは1997年で、その直後にも法人税と所得税が下げられた。所得税と法人税の税収は、この30年間で14.7兆円減っていて、現在の消費税の税収は17.6兆円である。つまり、消費税の税収の大半は、所得税と法人税の減税分の穴埋めに使われている。社会保障費にはほとんど使われていない。

 

法人税率は、1988年までは43.3%だったものが、2018年には23.2%と半減している。日本では、研究開発減税など法人税にさまざまな抜け穴があり、実際の税負担は低くなる。研究開発減税は法人税が20%割引になる。これは、儲かっている企業の税負担を減らし、その分を国民に負担させるということで、日本経済を窮地に追い詰めるものだった。

所得が1億円以上の所得税は1980年は75%だったものが、2015年には45%になっている。主な富裕層の優遇税制は、開業医の経費計上の特例と配当所得の税金である。日本の株の配当所得の税金15%は先進国で最も安い。イギリス37.5%の半分以下で、投資家優遇のアメリカ20%よりも安い。2002年に商法が改正され、企業は赤字決算でも配当できるようになった。この結果、上場企業は、株式配当を激増させた。2005年と2017年を比較すれば、約3倍の増加である。そして配当所得を得ている人は収入が激増して、日本では億万長者が激増している。その一方で、この間にサラリーマンの給料はまったく上がっていない。2017年は432万円で、2005年の437万円の水準に達してないし、バブル期に比べて20%も下がったままである。さらにサラリーマンは、消費税の増税や社会保険料の増額で、負担は増すばかりだった。こんな金持ち優遇政策はないし、格差社会になって当たり前である。

大企業の優遇税制もある。輸出企業は輸出に消費税はかからないため、戻し税がある。大手輸出企業は、下請け企業にコスト削減を盾に価格引き下げしており、下請けは消費税分を価格に転嫁できない。従って、大手輸出企業は戻し税を丸儲けしている。

大手輸出企業は、外国の子会社から配当を受け取った場合、その95%は課税対象からはずされる。これが導入されたのは2009年である。それまでは、海外子会社からの配当は、海外で源泉徴収された税金分だけを日本の法人税から控除するという、ごくまっとうな方法がとられていた。海外子会社配当の非課税制度というのは、大手輸出企業の収入の柱を非課税にする制度である。

 

法人税減税により、外国企業を日本に誘致することを主張する人間もいるかもしれない。外国企業の日本直接投資残高は、2016年末では過去最高の27.8兆円に達した。ただ日本直接投資残高のGDP比率では、2016年末時点でわずか5.2%にすぎず、198カ国のうち190位と世界最低レベルである。要するに、日本経済は外国企業に依存しておらず、外国企業による日本の経済成長に対する影響は少ない。

 

例えば香港では、国内経済は外国企業に依存している。香港金融市場の参加者のほとんどは外国企業。従って、外国企業誘致のため、香港の法人税率は16.5%と低い。日本は香港と違って、外国企業のビジネス環境にも劣る。日本では英語でビジネスができない。当局などへの提出書類も英語ではなく日本語である。香港の所得税も最高税率で17%と国際的に最低水準であり、外国駐在員は税金の安い香港で給料をもらいたい。日本が外国企業の誘致をするには、法人税以外にも様々な障壁があり、法人税を下げればいいというものではない。

 

先に述べた通り、日本経済の外国企業への依存度は低いため、法人税減税による経済効果は限定的であるのに対し、消費税の増税は個人消費に多大な影響があり、経済低迷の大きな原因となりえる。景気対策を考えた場合、法人税増税による損失より、消費税廃止の効果の方がはるかに大きいのである。

消費税は非効率な税制でもある。消費税は、該当事業者が膨大であり、集計計算も複雑であるから、そのまま国庫に納入されず、事業者に漏れてしまう。たとえば現在、国民消費は300兆円近くあるので、消費税は本来24兆円くらいなとおかしい。しかし、現在の消費税は15兆円くらいである。国民の払った消費税の3分の1程度は国庫に入らず消えてしまっている。

最後に、ヨーロッパ諸国では消費税20%以上の国も珍しくなく、日本は税負担が軽いとの指摘もある。しかしヨーロッパ諸国は経済成長しているし、賃金も上昇している訳で、日本とは経済環境が違う。さらに、特に北欧諸国などは、政治家と公務員が、国家、国民のために奉仕する精神が高く、税金の無駄遣いは全くなく、消費税の全額を社会保障費に使います。そのため、国民から消費税は支持されるのである。日本では、政治家と官僚の税金の無駄遣いがひどく、増税に対する国民の理解は得られない。消費税は社会保障費に使われず、無駄遣いされるに決まっている。ヨーロッパ諸国の消費税と日本の消費税を一緒にしてほしくないのである。

このように、法人税と所得税を30年前までの水準まで増税しなくても、数十パーセント程度増税して、富裕層と大企業の優遇税制を廃止すれば、消費税は余裕で廃止できる。現在の日本の景気回復の特効薬は、消費税の廃止である。



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